台高・備後川大谷

2002年8月3日(土)〜4日(日)
L越山・西・大塚・古川原

8月2日午後10時横浜発、東名経由東名阪桑名で一服、大塚さんに運転交代をお願いして伊勢道勢和多気から一般道へとつなぎ尾鷲を経て、今年の春合宿の又口川パーティーも見送ったであろうクチスボダムサイトに着いたのは翌朝5時で山の端からカンカンと朝日が上がりつつあった。

おあつらえ向きのダム事務所屋根付駐車場を拝借し3時間の仮眠後、東ノ川流域側に越えて9時に備後川水系入口の備後橋から林道を奥に入る。本来は車をここに置き東ノ川月谷下降後にピックアップする予定だったがあまりに暑く、大谷までの10kmを徒歩で行く気がせず躊躇なくアクセルを踏み大谷出合へ。空身なら取りにくるのも楽だろう、と古川原君を鼓舞するが本音では行動予定時間より既に大幅に押しており月谷下降は半ば諦めている。

この台高山脈最南端部流域の源頭はいずれも標高1000m前後に過ぎないのだが、南紀の谷同様に多雨に浸食された谷の深さに驚きつつ長い渕を連ねた下流部廊下帯にしずしずと踏み込んでゆく。三つ目の渕は長く、30m以上ありそうだが好天続きの減水によるのか水流は殆どなく快適に泳いで抜けた。水には主に珪藻によると思われる川ゴケの匂いがほのかに漂い、清冽さにおいて我々の夏のホームグラウンドである東北の沢に及ぶべくもないが、代わりにある種の艶かしさを感じさせる。
瀬戸小屋谷を分け、4m斜瀑を小さく巻き小滝を越えると直径20m近くありそうな大釜を従えた7m滝。嬉々として水遊びに興じるメンバーを見ながら、これだけの釜を穿った太古の滝の大きさがいかばかりだったのか想像すると気が遠くなる。
ここは水流左を快適に登ると、谷は右折し再び釜を携えた2段8m滝。西さんが泳いで下段水流右に取付き傾斜の強い上段も何とか越せそうだとゴーサイン。上段水流左脇は取付き易そうだが瀑水に跳ね飛ばされそうなので右フェースを古川原君にショルダーで上がってもらう。
”ガバ”があるが全体にぬめっていて緊張するところだ。続く3m滝を登り10m滝を左岸から巻いて落口の白いナメ床に降り立つと程なく二俣。右俣は穏やかな流れが見渡せるが左俣入口は暗く、これから始まるであろう連瀑帯に軽い緊張感で締め付けられている胃袋に行動食を流し込む。

まずは多段6mをこなすと小滝の上の左岩壁から降り注ぐ20m滝が立ちふさがる。下部はホールド豊富な左フェースを登り上部はさらに左の樹林帯に逃げて落口に降りると更に10m程のナメ状多段滝になっており快適に水流の中を辿る。続く10m滝は右ブッシュに絡んで登り20m多段滝は右フェースを気分よく直登。次のすっきりしたフェースにかかる30m直瀑は左右いずれからも巻けそうだが右窪からフェース延長の岩壁の切れ目まで高度を稼ぎながら迂回してシカ道を拾いながらブッシュ伝いに落口へ。

ナメ滝5mを過ぎ、谷が右曲すると両岸が30〜40mの高度で屹立し、その挟間が15m程のチムニー状滝になっている。概ね順層の岩壁を噛んで落ちる水流伝いが登攀ルートかも知れないが我々の技量を超えている。
滝壷に首までつかりほてった体を冷やしながら巻きルートを思案して右岸ガレ交じりの浅いルンゼから大迂回を始める。西さんのルートファインディングでルンゼ左岸の岩壁切れ目のガレをうまく突き、884.7mピーク中腹の尾根を越えてブッシュ伝いにナメ状10m滝直上で谷に戻る。

連瀑帯は終わり穏やかになった気持ちの良いナメ床を行くと小さい河原を見つける。明日の帰路運転時間を勘案すると、月谷下降を実行するには今日中に同流域に山越えしておかねばならないが大谷が十分楽しませてくれたこともあり、明日は途中で左岸分水尾根を越えて備後川ナル谷沿いの林道を利用して下山することとして、今日はここまでにする。

4日、今日もカンカン照りだ。源流部は皆伐された後ヒノキの苗が植えられたものの手入れもされず放置されたとみられ、自生えの潅木が生い茂り始めており遠からず太古の景観に戻ってゆくのではないかと思われた。既に谷には伐採木の残骸はここまで跡形もない。
汗だくで正午過ぎに備後川本流に戻り水浴び。川底の石にはびっしりと珪藻が付き裸足では滑って立っていられない程だ。帰路、紀伊長島で古川原君が学友ご母堂から頂戴したアユ、あるいは我々の体に染み付いた備後川の水によるのか判別しがたい盛夏の川ゴケの匂いが長い車中、鼻腔をくすぐり続けた。(記:越山)

コースタイム
8月3日 10:25遡行開始 〜 10:45 瀬戸小屋谷出合 〜 12:35二俣 〜 15:35 連瀑帯上泊場
8月4日 9:05 出発 〜 12:20 ナル谷林道経由大谷出合

1/25,000地形図
高代山

交通機関・費用
クルマ、30,000円(高速・ガソリン代)

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