朝日・三面川岩井又沢畑沢

2002年8月10日〜8月13日
L佐藤 長南 古川原 望月

2002/08/10 朝日:岩井又沢畑沢

8月10日 晴れ
村上駅前からタクシーで奥三面ダムへ向かい、林道の終点で下車。朝から暑い。そこにすでに停まっていた3台の車の脇で、3人のパーティーが入渓準備をしていた。話によれば、岩井俣に先行パーティーが入っていったという。彼ら自身は岩井又よりも上流の竹の沢に入るそうだった。

イナゴを捕えながら登山道を歩き、三面川の水面が光るのを時折眼下に眺めながら、1時間強で入渓点の岩井又出合に到着。暑さと体調不良とでバテてしまっていた長南さんは、沢筋に降り涼風に吹かれると、とたんに体力を回復したようだ。

さっそく伝家の宝刀「ハエたたき」で、噂に聞いた三面のアブを打ち始める。例年よりも少ないというが、やはりその数は尋常ではなく、ハエたたきの威力が初めから遺憾なく発揮された。そうして三面の透き通った流れとアブと半時間ほど戯れ、充分休憩を取ると、遡行を開始した。
岩井又に入るとすぐに淵が現れ、つかりながら進んで行く。両岸がゴルジュ状で薄暗い中を淵や瀞が連なり、しばらくの間、つかりや泳ぎの連続となる。
モカケ沢を過ぎたところで先行パーティーを追いぬき、最初の2メートルの滝の手前で休憩をとる。その間、そのパーティーが先に左岸から高巻きを開始したが、15分後にわれわれも後を追うと、すぐにまた追い抜いた。どうやら初心者の多いらしい。
高巻きを終えるとまたしばらくゴルジュの中のつかりや泳ぎになる。そしてガッコ沢上の6メートルの滝を左岸から高巻いた後はゴーロ歩きと泳ぎになる。
このあたりでは魚影はあまり見られなかった。アブを避けるためにも、魚がいそうな淵や瀞はわれわれが泳いで進む。
シゲマツ沢出合周辺から、沢が開けて明るくなり、コクゾウ沢を超えると巨岩の転がる一帯となる。
この日の行程は中流部のゴルジュ帯手前で止まるか、それともそれを突破すするかのどちらかの選択肢があったが、時間的にも体力的にも、ゴルジュ突破は難しくなってきた。
4メートルの滝、オクゾウ沢先のゴルジュ内の1メートル滝を左岸から巻き、サゾウ沢先のゴルジュを右岸から巻いた先の、一ヶ所開けた川原に着いたのが16時15分、ここを泊場とする。
佐藤さん、長南さんがそれぞれ上流と下流に釣りに行き、佐藤さんが3匹持ち帰ってきた。夕食は古川原が2kgのドライアイスを担いで保冷してきた肉で、石板焼肉をした。

8月11日 曇りのち雨
目を覚ましテントを出ると、あたり一面しっとりと湿っている。目前にあるゴルジュ帯に入ればつかりや泳ぎが多くなるだろうが、体を温めてくれる太陽は現れそうにない。どんよりとした空を見ると、確実に雨が降ることがわかる。早く出発したほうがよさそうだ。
ウデコエ沢を超え、4メートルの滝を登りしばらくいくと、左にカーブする沢に沿って大きな絶壁が現れる。その左の端にはルンゼ状の滝が絶壁を縦に貫く巨大なひびのように入っており、その底には黒い土をかぶった雪渓が小さくわだかまっていた。
このあたりから周囲の景色や地形のスケールが大きなものになってきて、一つ一つの岩や、ゴルジュの壁が、より大きな、荒々しい力の作用の痕をとどめている。
アブもいなくなったゴルジュ帯の中は、巨岩ゴーロや淵や瀞が続き、登れない滝もなく非常に楽しい。
権二郎沢手前あたりから全員が竿を出して、釣りながら遡行する。去年の夏合宿で偶然釣れたことがあるだけの初心者の私も、ようやく多少のコツを得て、みなで量産体制に入った。この日の行程も、釣りを選ぶか距離を稼ぐかという選択肢があったが、結局前者が選ばれた。

マゴ上戸沢出合あたりから雨が降り始め、次第に雨脚が強まって土砂降りになり、透明だった清流がたちまち茶色く増水し、渡渉も危険な状態になってきた。畑沢との出合の少し前に開けた部分があったため、雨が弱まるまで全身ずぶぬれになりながら、そこで1時間強停滞した。
この気象のまま本流を遡行しつづけることは難しいと判断され、畑沢にエスケープすることになった。増水した中で畑沢に入るのは一苦労で、いったん右岸に渡渉し、ツタの絡まる藪をこいで出合上まで行き、そこから左岸に渡渉して畑沢にたどり着いた。出合から15分ほどのところに、浸水の心配のなさそうなスペースがあり、そこを泊場とした。

夜になると雨が上がり、星空も見られるほどに雲も払われ晴れ渡り、焚き火を起こして岩魚の燻製を作った。
昼間、釣りを早めに切り上げて本流を上るという判断をしなかったことが功を奏し、大量の岩魚料理と快適なテン場を享受できた。

8月12日 雨
4時起床6時発の予定、起きてみると土砂降りである。再び寝て7時ごろ起きると、やはりひどい雨だ。やがて雨はやんだが、沢は濁流となっており、とても遡行はできない。降ったりやんだりが続き、テントの出入りを繰り返すばかりだ。
2時を過ぎても一向に状況が改善しないため、一日停滞ということが決まる。いつのまにか酒を飲み出している。
3時頃、土砂降りとともに雷も近くで鳴り出し、いよいよ大荒れになってきた。沢の濁流も普通の濁流を通り越してココアを流したような異常に茶色で、水中から岩がぶつかり合う鈍い音が時折聞こえてきた。
気がつくとテントの周りにはそれまでなかった水流が幾筋か流れ始めており、そのうちのひとつはテントの真下をと流れようとしていたため、水路を造成して流れを変えようと試みたが力及ばず、本流からの浸水の危険も考えられたため、テントの位置を少しずらした。夕方、雨の合間を見計らって泊場付近で竿を出し、計3匹釣れた。そうこうしているうちに日が暮れ、夜になるとまた晴れ、ぬれたものを焚き火で乾かした。

8月13日 雨のち曇り
やはり雨。増水はしているが、進めなくはない。7時5分、遡行を開始する。1時間以上ゴーロが続き、7メートルの魚止めの滝、5メートルの滝を二つ超えると、喜助滝の下に出た。12メートルの喜助滝の上にはさらに大きな滝がかかっていて、その先ずっと滝が連なっているという。ここから高巻きになる。

佐藤さんによれば、この高巻きは連瀑帯の途中でいったん本流に下り、瀑水を浴びながら渡渉して、滝の脇を上れば比較的楽に行けるとのことであった。しかし今回はそうはいかなかった。まず高巻きの半ばに古川原と私で、ザックを置いてその下降地点の下見に行ったが、帰りの藪の中で居場所を見失い、長時間藪の中をさまよって時間をロスした。また、本来渡渉するはずの部分も、増水で完全に滝の中に没しており渡渉できないことは明らかだったため、連瀑帯すべてを高巻くことになり、結局沢筋に戻れたのは、高巻き開始から5時間後のことだった。

昼食をとって体力を回復した後、再び遡行開始。12メートル、6メートルの滝はともに左岸から小さく巻いた。そこを過ぎると両岸に草原が見えるようになり、源頭部の様相を呈してくる。次の5メートルの滝は右岸から入る小さな滝を登ってトラバースして超えたが、長南さんは直接滝の左岸から小さく高巻いていた。
源頭部の遡行中、霧が晴れて明るく視界が開け、周囲の景色を展望することができる一時があった。、停滞と長い高巻きで消耗していたわれわれの心身ともに、リフレッシュすることができた。稜線上に出たのは17時30分である。

日暮沢小屋にいるはずの増田さんのパーティーとの無線交信は、5時、6時、7時とも不通で、状況の飲み込めぬまま、日没後の暗い夜の、稜線上の登山道をヘッドライトの光を頼りに下った。

日暮沢小屋に到着すると、音を聞きつけた仲間がみな中から出てきて、労をねぎらってくれた。高巻き5時間、下山5時間、計15時間のエスケープがようやく終わった。
疲れているときには、暖かい出迎えが一番である。心配していたビールも、一人一本分は飲まずにとっておいてくれた。
皆の酔い具合や、小屋の中の、熟しきって惰な空気に満ちた宴の跡を見るにつけ、そのパーティーの合宿のすべてが想像され衝撃を受けたが、とにかく疲れた体を休めながら、互いの合宿を語り合って静かな最後の夜を過ごした。(記:望月)

個人的な感想
今回の合宿は天候に恵まれず、一日停滞とエスケープという結果になったが、私にとってはかえってそれで得るものがあった。
透き通った清流が、雨で増水して濁流になるまでの変化、沢の大きさによって違う水量の増減にかかる時間、水量によって変化する流れ、増水したときの岩魚の居場所など、停滞すればこそこの目で間近に、しかも一箇所を丸一日かけて見続けることができるものだ。
普段の遡行では、沢の下流から上流までの渓相や景観の変化に気をとられて、その沢のある一点での、時間の中での変化を見ることはできない。それに気づけたことで、沢や自然を見る視点が少し変わった気がする。

<コースタイム>
8/10 林道末端(8:30)〜岩井又出合入渓点(10:05〜10:30)〜ガッコ沢出合(13:00から13:15)〜サゾウ沢出合(15:55)〜泊場(16:15)
8/11 泊場(8:20発)〜大上戸沢出合(12:05)〜泊場(18:30)
8/13 泊場(7:05)〜喜助滝下(8:40〜9:00)〜高巻き〜高巻き終了12m滝下(14:00〜14:40)〜稜線上(17:30)〜日暮沢小屋(22:20)

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