イヌワシがカラスに食べられちゃった話

 皆さんはイヌワシという鳥をご存知でしょうか。翼を広げると2メートルにもなる大型の猛禽類で、日本各地の天狗伝説の主は実はこのイヌワシだったのではないかという人もいます。

イヌワシは全国の山岳地帯にすみ、岩だなや樹木に営巣します。ノウサギ、ヤマドリ、ヘビなどを捕食し、食物連鎖の頂点にたつ彼ら大型猛禽は、自然の健全度のバロメーターなのです。言い換えれば、イヌワシが舞う山は豊かな自然が残っている証拠でもあります。私はかつてバードウォッチングに明け暮れていたことがありますが、残念ながら間近でみたことはありません。

さて、NHKのニュースでご覧になった方もいるかと思いますが、先日、奥只見でイヌワシのヒナがカラスに殺害されるという「事件」がありました。NHKで流されたちょっとショッキングな映像は、奥只見ダム発電所の増設工事をしている電源開発が設置していた無人カメラが撮影したもので、同社はイヌワシが子育てをしている間は調査工事を打ち切っていたということです。

 

私 「あれ見ました? あのカラスがイヌワシのヒナを食べちゃったやつ。あれ、この間調査に行ってきたやつですよね?」(私の知人の鳥類調査をやっている人に会ったときにその話が出ました。)
知人 「相手がカラスならしようがないな。電源開発は(工事が再開できて)カラスさまさまだろう。保護団体も文句がいえないし」
私 「私もこの間、あそこらへんの山に登ってきましたよ。未丈ヶ岳ですけど。多分あの辺だと思うけどなぁ。あのナントカ丸山スキー場があるあたり」
知人 「そうそう、まさにあの辺だよ」
私 「でも、そもそも何で、イヌワシの営巣地にカラスがいるわけ?」
知人 「やっぱり観光客がどっと入って、えさが増えたんだろう」
私 「結構、カラスが山の中でも増えていますよね。ゴミがあればねずみやイタチなんかも登ってくるし。ライチョウなんかもやられているんでしょう?」

ちょっと気になった私は、地元の自然保護団体に電話をして、詳しい話を聞いてみました。それによると…

このイヌワシの夫婦は94年から同じ地域で繁殖を繰り返しているのが観察されていたそうです。94年6月、この年は無事にヒナが巣立っていきました。95 年は工事の影響かどうか知りませんが、繁殖に失敗。96年は最初岩だなに営巣したそうですが、工事の振動で巣が落下。これに懲りて今度はマツの木に営巣したら、風が強く当たってヒナが凍死。そして97年は再び岩だなに営巣したところ、3月5日に産卵に成功、4月16日ヒナが孵化、そして4月30日、イヌワシ夫婦の留守の間にカラスの襲撃…。う~ん。なんとも悲惨な話ではありませんか。

この人の話によると、イヌワシはオスが狩りに行っている間、雌が巣を守るという夫婦分業をおこなっているそうです。それではなぜこの夫婦は、そろって狩りにでかけたのでしょうか。どうやら、この一帯には、イヌワシがえさとするウサギなどの小動物がいなくなってしまっているのではないかということです。彼ら(イヌワシ夫婦)は営巣の場所を間違えてしまったんでしょうね。といっても、いったい適当な営巣地が、日本にどれだけ残っているものやら。

たかだかイヌワシ。されどイヌワシ。山にはなるべくゴミを持ち込まないようにしたいものだと、深く反省した次第です。(み)

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