野草を喰らう

 今年の山菜もフキノトウではじまった。
会津三岩岳の避難小屋で食べたフキ味噌が今年の初山菜。登り口で採ったフキノトウをフキ味噌にしたわけだが、あの強烈な香りで飲む酒はまた格別なものがある。ちびちびやるには丁度よい香りと塩加減。

フキ味噌の作り方はいろいろあるけれど山ではこんな風に作っている。

1.熱湯に千切りながら入れる(茹でない)
2.少しかき混ぜて絞る
3.味噌とあえて叩く

これだけ。シンプルだが山ではこのくらいがいい。肝心なのは香りを生かすため決して茹でないこと。湯通しする程度に留めればより鮮烈な香りが味わえる。
これでも物足りなければ湯通しせずに生のまま作れば強烈なエグミを味わえる。

逆に市販のフキ味噌のようにエグミを嫌いおかず風につくるには、

1.良く洗う
2.細かく刻む
3.軽く炒める
4.味噌・酒・砂糖・(みりん)を適当に加える
5. 細かい鰹節を多量に入れる

のようにすれば上品な一品に。

さて、フキノトウで勢いづいた山菜への求心力だが、毎年5月末の山菜山行までは山菜不毛地帯で沢に行ってるわけであるから、毎度やり場のないものになってしまっていた。
で、今年は一計を案じた。雪国の瑞々しい山菜は食えなくても里山などの山菜や野草なら食える。ただ問題は都会育ちでその辺のものはツクシぐらいしか知らないこと。
というわけで、4月5月は図鑑を持って通勤をすることになった。

仕事場への行き帰りに外堀やら内堀のあたりや公園や台地の土手などを巡るのである。そして食えそうな野草を同定して喰らおうというのである。おもしろいことにそういう目で見てみると都心の街路樹の下草や花壇にはローズマリーやギボウシなどが植えられているのが改めて発見できたりもするのである。まあ、そういうものは食糧難の時代に取っておくとして、今回は野草である。

以下、今春に喰らった野草の感想である。

■カラスノエンドウ
あの紫色の花とサヤをつけてどこでもみられる野草である。豆科なのでうまそう。はじめ柔らかそうなツルをてんぷらで頂いた。まあまあうまいので次は炒めてみた。臭みがなく食える。若いサヤは炒めてサヤエンドウのように頂いてもうまい。豆は小さなグリーンピースみたいでこれもうまい。

■ヒメオドリコソウ
これもどこでも見られる野草である。帰化種のようだ。シソ科なので食えそうだが見た目はとてもうまそうではない。臭いも若干臭い。こういうのはまずてんぷらということでてんぷらで頂いた。臭いは消えたがお味は可も不可もなし。

■ナズナ
言わずと知れた春の七草。ぺんぺん草である。都心にもあちらこちらにある。言わずと知れたといいながら今までず~っとこれはハコベだと思っていた。情けない。
炒めて頂いた。七草だからうまいと思ったが育ちすぎだったのか筋っぽくてうまくなかった。

■ハコベ
これも春の七草である。柔らかそうな緑でうまそうだったが、都心の公園で採ったのがいけなかったのかホコリ臭くておいしくはなかった。場所を選べばうまそうではある。

■ヤエムグラ
見た目ちょっと食えそうにないが、食ってみた^_^;炒めるとイガイガが消えて少し粘りが出ていい感じなのであるが如何せんホコリ臭い。工夫すればうまくなるかも。

■ミョウガタケ
これは野草というか、庭(誇大表現^_^;)の茗荷の若芽である。筍というよりネマガリの若芽のようにすくっと出てくる。これはうまかった。小口に切って塩で揉めば薬味になるし、じゃこと一緒にご飯に混ぜるとうまい。香りは茗荷のそれである。そういえばウチの周りは茗荷が多い。本郷台なので一つ向こうの台地には茗荷谷。関係あるのだろうか。

と庭のものが食えるようになると野草探しも下火になってしまった。今、庭には、キュウリ、トマト、トウガラシ、トマピー、二十日大根、ミツバ、シソ、ミョウガ、ヤマノイモ、サルナシ、バジル、オレガノ、イタリアンパセリ、スープセルリ、タイム、パセリ、クレソン、ミント、ナスタチュームと食えるものばかりになってしまった。唯一食えないのは五十嵐さんがくださった「初雪カズラ」のみになってしまった。くれぐれも他の食えなかったもののように扱わず大切に育てなければ。

庭に出たカタバミも食ってやろうとしているうちに山菜の季節になった。今年は、山菜を追いかけるかのように、上越からはじまり虎毛、八幡平へと北上していろいろなものを頂いた。ウド、タラの芽、コシアブラ、コゴミ、ミズ、ウルイ、シドケ、イワタバコ、ネマガリタケ、ショウマ…。

図鑑を持っていろいろ調べているうちに山で見る植物も知りたくなってきた。特に樹である。やっと食えるもの以外にも興味が向いてきたわけであるが、そういう目で山を見れるようになると沢の面白さもまた拡がるのである。日本の自然の一番奥深くに入っていると自負している沢屋ともあろうものが、その自然を捉える術を知らないとは情けない話である。そんなことに山を20年近くやって今ごろ気づくのはもっと情けない。

そういう想いがあって今年の春の山は楽しかった。特に新緑のころの奥秩父は美しかった。沢の水線沿いだけでなく山全体を見ると非常に美しい地域である。表丹沢が嫌いな理由もこのあたりにあるのだろう。
そういえば、秩父でリョウブの樹を教えてもらった。特徴のある気なので以前からなんだろうと思っていた樹であったが、若芽は食えるそうである。秩父ではイワナと煮て昔は食ったそうだ。そういえばイワナを沢で煮て食うということは考えたことがなかったが、味噌煮にしろ醤油で煮るにしろミズやリョウブと煮ればうまそうだ。

おっとまた食う話になってしまった。まだまだである。(ち)

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