5月1日(土)晴れ
夜行バスで熊野市駅に着き、朝食と買い物を済ませてタクシーに乗り、岩屋橋を目指す。白川又本谷パーティーの後姿を見送り、岩屋橋でタクシーを下車、林道を少し歩いてどん詰まりから沢に降りる。
橋のあたりは伏流になっていたが、入渓点では流れが出ていた。しばらくは何の変哲もないゴーロをなるべく仕事道を拾いながら進む。沢が屈曲する地形図上414mのあたりからゴルジュ帯となる。その入口にある長い瀞をもった5m×5mの滝は左岸に残された頼りないロープに身を託し、空身でへつって荷物をザイルで引っ張り上げた。釜を持つ2〜5mの小滝が続くが、夏場であれば泳いで取り付いてシャワーを浴びながら・・・・・と行きたい所だが、この季節ではそうもいかず、右岸の巻き道を3段10mの滝上まで一気に巻いた。
そのあたりから巨岩のゴーロに行く手を阻まれ、今シーズン初の泊まりの重荷が身にこたえる。巨岩により3筋に流れが分かれた場所では、左の15m滝は全く登れないので、真ん中の岩の間をまっちゃんが空身で登り、後続を引っ張りあげてもらった。なおもゴーロは続き、4mの滝では右岸の大岩をまっちゃんがリードして登り、その上の滝も苦労しそうなので、時間節約のためいくつかまとめて巻き、懸垂で沢に降り立った。
降り立った場所からすぐ上に20×20mのプールのような釜を持つ40mの滝がある。この日は天気がよく、大滝の水しぶきも心地よい。雄滝・雌滝以外にもこんな立派な滝があるとは…感心してしばし滝に見とれる。登山体系には「右のルンゼから」とあるが、どうみてもルートは左。「右岸」の間違いだろうということにして左のルンゼから巻いた。
左岸は150〜200mの切り立った岩壁となるが、沢自体は時々小滝を交えたゴーロといった渓相で傾斜もきつくない。本日の目標地点は地形図上の「岩屋谷」の「岩」の字あたりとしていたが、まさにそこの右岸にテント一張り分の台地を見つけて、泊場とする。豊富な薪と天候に恵まれ、合宿1日目の夜は幸せな夜となった。
5月2日(日)曇りのち雨
今日は長い行程なので早めの出発とする。と言いつつ遅くなるのが当会の常だが、今回は本当に早かった。脅威の6時代出発。事前の天気予報では今日まではいい天気と言っていたが、すでに空はどんより曇っている。天気の変化が速くなったか。
テン場からすぐ上にきれいな幅広の斜瀑があり、そのすぐ上で1297mのピークから派生する沢が連瀑を架けて出合っている。本流側も5〜10mの連瀑となり、それらをまとめて右岸から巻く。
CS25mは最後を左の岩の隙間からずり上がるようにして抜けると、その上に雌滝が見える。さあ、いよいよ今回の山行の核心部だ。
左のルンゼから取り付くが段々急になり、二俣に分かれている右を登る。ここでもまっちゃんがリードし、後続は確保してもらって登った。上部もかなり急で落石要注意。最後はいやらしいトラバースをこなして右の枝尾根に上がる。そこからはすぐ上に雄滝が見える。
霧雨が降ってきてガスがかかり、雄滝の上部を隠してしまっている。せめて雌滝・雄滝は晴れて欲しかったのに。晴れていればどんなに勇壮なものだろう。水煙に虹も見えたかもしれない。恨めしそうに空を見上げながらそう思った。
雄滝の高巻きは雌滝よりも簡単だった。左のルンゼから取り付いてただひたすら登るのだが、途中ルートを左に取れば傾斜もそれほどきつくない。ただし、滝の落ち口よりもかなり上への大高巻きとなる。枝尾根を乗越して反対側の緩やかな斜面を下ると、今までとはうって変わったナメ状の穏やかな渓相となった。
休憩をとり、落口を確認しに行った。流れが目の前でスパッと消え、開けた視界の遥か下のほうに池原貯水池や白川の集落の建物がガスの中に霞んで見える。そういえば3年前に白川又の本谷を遡行した際、白川大橋でいったんタクシーを止め、この大滝を遠くに眺めたことを思い出した。
ナメは長続きせず、すぐに平凡な渓相となる。左岸に台地が点在し、コバイケイソウの畑となっている。「これが全部うるいだったらなあ。」などというつまらん妄想を抱きながらどんどん距離と高度を稼ぐ。雨は小雨で降ったりやんだりといった感じ。どうやら本格的な前線ではないようだ。その後はところどころに小滝が出現するが、特筆すべきこともなく、藪こぎもほとんどなく1477.6mのピークにどんぴしゃ到達。以外にも道標があった。
そこから北へ進路をとり下降にかかる。下降の沢は何の期待もしていなかったが、15m、25mの滝を擁し、その間にはナメがあるなど、それなりに楽しませてくれた。15:00の交信を行うが感度なし。
大黒河谷の出合にはテン場はなく、雨天時のテン場はなるべく台地状のところを確保したいこと、時間的にも暗くなるまでにはまだ間があることから、テン場を探しながら1230m付近の開けたあたりを目指して遡行を続けることとした。
出合から上は時々小滝を交えた渓相で、快適に超えられるため本来ならそれなりに楽しめるはずであるが、朝7時前から行動して疲れが出てきており、加えて雨なので、沈みがちな気分で皆黙りこくってひたすらテン場を目指した。16:00の交信も感度なし。
予定の位置に快適な場所を見つけてやっと荷物を降ろす。濡れた衣服が不快であったが、乾いたものに着替えてテントに入るとほっと一息ついた。その夜はテントの中での食事・宴会となったが、疲れていたせいか始まりが遅かった割には早めにお開きとなった。ときおりテントを打つ雨の音が気になったが、あっという間に深い眠りに引きずり込まれていった。
5月3日(月)晴れ
目が覚めるとテントを打つ雨の音がしない。空ははじめ曇っていたが、明るくなるにつれて雲の切れ間が見えるようになり、気分が晴れる。濡れた衣服を気合で着て出発。今日は集中日だ。
1344mの二俣までは傾斜も緩く、川原状の平凡な渓相だが、そこから上は次第に傾斜がきつくなり、滝を架けたゴルジュとなる。谷が狭まり、巨岩のゴーロとなってしばらく行った所で左に逃げ、仏生ヶ岳の少し下を目指す。つめは針葉樹で、たいした藪こぎなく稜線に出る。
仏生ヶ岳に登ったが登山道がわからないため、一旦戻って西側の斜面を探し、登山道を見つける。晴れて暑い中をひたすら集中場所目指して歩く。結構疲れた。13:00の交信は一応聞こえたが感度不良。14:00にはばっちり入った。本谷パーティーはもう少しで詰め上がるとのこと。15:00は八剣谷の源頭部。ビール買いを大塚さんにお願いして下降をはじめる。
集中場所の八剣谷と池ノ谷の出合に到着し、薪拾いをしているとしばらくして白川又本谷パーティーも到着して無事集中。その夜は途中から小雨がぱらつくも一応焚火ができ、まあまあの夜となった。
5月4日(火)雨
夜中にテントを打つ雨の音が気に懸かり外を見るが、たいした増水もしていないようなのでそのまま寝る。朝目が覚めても相変わらずの雨。本谷パーティーと相談の結果、下山先を天ノ川温泉に変更。狼平からの沢沿いの道は通行止めとなっていた。栃尾辻から天ノ川温泉までの登山道は快適な歩きやすい道だった。
温泉で汗を流してビールで今年の春合宿を締めくくった。(記:増田)
《コースタイム》
1日:岩屋橋(8:40)〜入渓点(9:40)〜40m滝(13:30)〜700m付近テン場(15:30)
2日:テン場(6:50)〜雌滝下(8:10)〜雄滝上(10:50)〜1074mの二俣(12:00〜12:25)〜1477.6mピーク(14:15)〜大黒河谷出合(15:45)〜1230m付近テン場(17:15)
3日:テン場(8:30)〜稜線(11:07)〜八剣谷源頭部(15:00)〜八剣谷・池の谷出合のテン場(15:40)
4日:テン場(9:20)〜