奥利根・矢木沢

2004年7月10日(土)〜7月11日(日)
L増田、関、山口

2004/07/10 奥利根:矢木沢

西メーグリ。地図上で見たその沢の名前に心惹かれる。「メーグリ」って、「巡る」からきているのかな、綺麗な名前だな‥‥と思った。地形図で、沢の名前を眺めてひとつひとつを想像していると、それだけで楽しい。最近ようやく、みんなの言う「沢と沢とを繋ぎ、地図上に線を引く」という感覚がわかってきた気がする。

今回は、矢木沢本流から西メーグリ沢を詰め、板幽沢を下降し宝川に至る計画だ。

●7/10(土) 晴れのち雷雨

水上駅からタクシーにのる。30〜40分ほどで矢木沢橋を越えて入渓点に到着。
アスファルトの上に立つと、クラクラしてくるほどの熱さ。予報から雨を覚悟していたが、この時点ではまだ晴れている。運転手さんの話では、ここ三日間夕立が続いているとのこと。今日も夕立が来たら、増水は間違いなしだろうか。
記録では左岸に踏み後もあるようだったが、不明瞭。天気もよいので本流通しに歩くことにする。10:20に入渓。入渓点から幽くら沢出合いまでは何もなく、くるぶしくらいの深さでさらさらと流れゆく幅広の渓が続く。炎天下の河原歩きに、皆、「暑い〜暑い〜」を繰り返し、手ぬぐいを水で濡らし、ついには頭から水を浴びる。

幽くら沢出合いで、釣り師に会う。幽くら沢200M上流には、雪の固まりがあったとのこと。本流や西メーグリにもあるだろうかと思いながら、出合いの滝を右から巻く。ささやかに注ぎ込む支流をいくつか見送った後、渓は少し狭まるが、両岸はあまり高くなく明るい渓相が続く。
ゴルジュの先にある魚止め滝は、右から巻く。本流は釣り師が多いためか、巻きの踏み後がしっかりしていて楽々と歩くことができる。魚止め滝より上流では、とぎれとぎれに美しいナメが現れ、目を楽しませてくれる。白い岩肌の淵にたたえられた水は、淡い碧に輝き、時々魚影を映す。変化にはやや乏しいものの、矢木沢本流は、ゆったりとして本当に綺麗だ。
ジロウジ沢出合いまで来ても、まだお昼前後。何もないと進むのが早い。
これはゆとりがあって嬉しいな〜、と思っていたが、この後とんでもないことになるのだ。西メーグリに近づくにつれ、次第に雲行きがあやしくなる。

13:30西メーグリ沢出合い着。ポツポツと雨が降り始める。今まで歩いてきた本流とうってかわって、西メーグリは出合いからいきなり、狭く暗いゴルジュが続いている。両岸は鋭く切り立ち、見上げると首が痛くなりそうなくらい。
出合いより30Mくらい先に、釜を持った3Mの滝が見える。滝の近くまでへつって行ったが、ぬめっていて、ホールド・スタンスともに乏しそう。出合いまでもどって、右岸を大きく巻くことにする。
斜面を登り始めたものの、斜度はきつく岸壁にもはばまれ、思うように進まない。関さんと私を安全なところに残し、増田さんが岸壁をトラバースしながら偵察に出る。やがて、ポツポツだった雨が豪雨に変わる。雷も鳴り始めたので、増田さんから「通り過ぎるまで待機」の指示。雨具をかぶり、低木の下に潜り込むが、雷は近くで轟き続けている。しばらくして増田さんから二度目の指示。「いったん降りよう」
懸垂して、先に降りていた増田さんに合流すると、すぐに本流対岸に渡るよう言われる。台地のある対岸に渡って、まじまじと沢を見てみると、来たときより水量が増えた気がした。

ザイルを回収した増田さんが戻ってきて、三人でしばし雨宿り。雷雨は相変わらず激しく、止みそうもないので、増田さんが上の台地の偵察に。関さんは上流へ行った。二人を待っている間、ぼんやりと沢を眺めていると、見る間に水が濁り、流れが速くなり、どんどんと水かさが増していく。目を疑うほどの変化だ。一人ドキドキしていると、まもなく関さんが帰ってきて、今度は二人でキャーキャー言って増水を眺める。
しばらくして偵察から帰ってきた増田さんが、「西メーグリが消えた」と、興奮気味に言う。言われて目をやると、なるほど、入り口のゴルジュが水中に没してしまっている。周りの急激な変化にふと不安になり、上流に耳を澄ませると、「ごおんごおん」と地を這うような音が響く。人の悲鳴にも似た、不気味な音もした。その直後、ザックを置いてあった岸辺に、ドッと濁流が流れ込んできた。驚いて一瞬、声が出ない。かろうじて「増田さん、関さん、ザック! 水が来た!」とか何とか言ったら、二人ともザックのところへ駆け戻ってきた。銀マットやハーネスなど手に手に荷物を持ち、斜面を這い上がる。登り詰めて振り返ると、ザックのあった場所はすでに濁流にのまれていた。初めての増水体験だった。

台地の藪の中に、安全な一夜の宿を見つけ、こうなってはもう仕方ない、と宴会を始める。豆腐カレー、サラダにセロリのスープ、関さんの食当は相変わらず豪華!
せ「やっぱり500ml、二本はいるかなぁ」
ま「あたりまえだろう、関。おまえはまだ、自分をわかっていないぞ」
せ「でも、一日12時間行動なんだよー」
ま「それは本末転倒だ。沢に於いて何が一番大切なのかを考えてみろ。酒と焚き火だろう!」
豪雨の音もなんのその、二人が合宿中の酒量について交わす論議を子守歌に、一足先に眠りに落ちた。

●7/11(日) 雨のち晴れ

夜中雨は降り続き、明け方一度止んだものの再び激しくなって、8時すぎにテン場を後にするときもまだ降っていた。沢の水量は多いものの、昨日よりはかなり引いている。水は少し濁りが取れ半透明になっていたので、行動を開始する。
なるべく沢には降りたくないので、ジロウジ沢出合までは、藪漕ぎしながら台地を行く。途中、昨日は優美に落ちていた4条の滝が、増水のため1条になり、狂ったように噴き出している姿を見てびっくりする。魚止め滝は、高台から見下ろしても恐いほどの迫力。沢通しが困難なところは、全て巻き下り、2時間ほどで入渓点に戻ることができた。
林道に上がったら陽が差していた。ゆっくり沢道具を片づけて、20分ほど車道を歩き、矢木沢ダムまで行ってタクシーを呼んだ。

今回、増水に関してはリーダーの判断が、絶対的に重要であることを感じた。
増田さんは、高巻き中、
・雷雨を避けるため待機
・豪雨が止みそうにないので、安全な場所へ避難と、すばやく判断していた。
無理に高巻きを強行し、西メーグリのゴルジュの中で増水に会った場合のことを考えると、ゾッとする。

あんなに猛り狂った沢も、一晩明けるとそしらぬ澄まし顔。ほんとに、沢は生き物と思った。西メーグリ沢、(お天気の日に)いつかまた行ってみたい。(記:山口)

<コースタイム>
7/10(土) 10:20入渓〜11:55魚止め滝上〜12:30ジロウジ沢出合い〜13:30西メーグリ沢出合い〜14:00ー15:00高巻き後、戻って本流左岸台地に幕
7/11(日) 8:20テン場発〜 9:30ジロウジ沢出合い〜11:30入渓点に戻る

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