奥利根・楢俣川矢種沢〜割沢左岸支流下降〜(撤退、往路を戻る)

2005年8月13日〜17日
L大塚・長南

2005/08/14 奥利根:矢種沢~割沢左岸支流下降

当初の予定では、矢種沢から割沢を下降して本谷へ繋ぎ小穂口沢本沢を目指す計画だったが、「大雨洪水注意報」「バックウォーターの予想以上の後退」「湖岸道のヤブ」等でエスケープを余儀なくされた。

昨年から渡船なくして奥利根を彷徨するルートを模索してきたが、ダム湖の水位によってはルートが分断されるという人為的な要因が決定要因と判明した段階で、個人的には全体としての「奥利根」に対しての興味は薄れてしまった。
とはいえ奥利根の個々の沢は未だ魅力的だ。今後は素直に船を利用して小穂口や本谷はぜひ訪れてみたいと思う。

13日 曇のち雨
「前線停滞」「南から湿った大気」「気圧の谷が通過」。やれやれな天候で当初出発予定の12日夜を13日に延期して楢俣の林道まで入り増水の程度を確かめることにする。
昼前に池袋を出発。水上に14時過ぎに着くが上越線が大雨の影響で水上までとなり、代行でタクシーが出払っていて1時間ほど待たされる。かなり降ったようだ。上越線から垣間見た利根川は濁流と化していたが、これはダムのない湯檜曽川からの濁りがほとんどで本谷、楢俣川はダムの上に行ってみないとわからない。

林道のゲートには車ごと閉じ込められてしまった人が往生していた。湯の小屋側のゲートが開いていたので入ったが下ってみると閉まっていてダム側に来てみても出られず困っているそうだ。自業自得ではあるが悪さをしに入ったようにも見えなかったので、唯一南京錠に替わっていない湯の小屋側のゲートの開け方を教え林道を歩きはじめる。

大石沢を越えるとバックウォーターになり増水具合が確認できる。ヘイズル沢出合手前で雨が降りはじめたので橋の袂でタープを張る。楢俣川は増水してはいるが渡渉はできそうだ。
最後のビールで入山を祝い早々に寝る。

14日 曇のち雨
4時過ぎにバイクの音で目が覚める。ヘッドライトをこちらに向け話しかける釣師。なんでわざわざ寝ているのを起こして話しかけてくるのか理解に苦しむ。それもヘッドライトをこちらに向けバイクに跨ったままだ。
ぐずぐず言っていても大塚リーダーに今日は「4時半起床」を告げられていたので仕方なく起きる。今後の天候と今晩の増水を考えると、今日はできれば割沢か赤倉沢出合まで行っておきたい。
いつもの狩小屋手前から楢俣本流にくだり対岸の道を矢種沢まで。少々増水しているが何の問題もなく渡渉でき、対岸の道も最近刈払われたようで歩きやすい。
矢種沢はナメ床が多く幅広の滝や堰堤状の滝が多い。少々規模は小さいが手頃な沢だ。トラロープが何箇所かにかかっているのが玉にキズ。
一の沢、二の沢、三の沢と快調に飛ばし、四の沢あたりにくるとそろそろ詰め上がりの様相を見せる。大塚さんのルート取りは矢種山西方の鞍部に詰め上がり、反対側の割沢右俣を下降するのではなく、ひとつ西の支流を直接割沢本流に下ろうというもの。このルートだと割沢二俣あたりのゴルジュを避けることができ時間を短縮できる。
矢種沢を詰めあげ割沢側をトラバース気味に目的の沢に向かうが岩峰に阻まれる。回り込んでも反対側はフェースになっていてスパッと落ちているようだ。一度登りなおして迂回する。

割沢の支流は最初傾斜がかなりきつい。4-5mの滝をクライムダウンと巻き下りでこなして行く。連瀑帯は最後の7mがが下れずザイルを出す。最後に6mの直瀑を巻き下れば本流に出る。
割沢は二俣から下は何もないとの昨年パーティの情報だったが、増水しているため何でもないところで時間を食う。テン場適地がなかなか見つからず結局出合まで下る。初日から12時間行動だ。それも大塚さんと2人なのでペースが速く疲れる。薪を集める気力もなくどうせ雨が降ってくるだろうから焚き火なしで飯を食って寝る。

15日 曇のち雨
今日はなか日だが割沢から赤倉沢への踏跡は湖面の下。赤倉沢出合の台地は湖面から1m強上で安心できるテン場だが昨年との水位の差に愕然とする。果たして今日中に小穂口の増水に耐えれるテン場まで行けるのだろうか。
赤倉沢出合からの踏跡もすぐに湖面の中へ消えていき、再び出たところが「見返り峠」。小泉本で見慣れた景色だが湖岸の木々が水の中だ。小穂口のバックウォーターははるか彼方に後退し確認できない。両岸はヘツるには急だし長い。小穂口に入るには本流から鞍部を乗越すしかなさそうだ。
雨は激しさを増す。とりあえず今日の増水で渡渉できなくなる前に本流を渡って右岸のテン場まで行っておかなければ進退極まる。が、見返り峠から先、踏跡はあっさり消え去り今日は水長沢出合までもあやしくなってきた。
小1時間ほど進むがこれまでのペースと今後の天候、小穂口への入渓路を考えるとエスケープの最終判断はどうやらこのあたりなので、雨のヤブの中で大塚さんと相談する。
今日水長沢まで行けたとして次の日は本流から尾根を乗越して南沢との二俣の台地。翌日大滝を越えたあたりだとすると予備日を使って下山となりギリギリの行程。この天候で停滞を考えない行程には無理があるし、尾根越えしたとして小穂口の二俣下までは増水していれば通過困難な渓相であることは2人とも昨年通過しているので承知している。
大塚さんも同じように考えていたらしく、一番安全な来たルートを戻るというエスケープルートを採ろうという。ブナ沢か奥ブナ沢あたりからのエスケープだと戻るよりはいいように思いがちだが、エスケープと決めたら変に色をつけることを考えずに安全で確実なルートを採るべきだと考え大塚さんの考えに同意し、赤倉沢出合まで戻ることにする。

昨年は薪がいたるところにあって盛大な焚き火をしたそうだが、今年はすべてが水の中。
今日こそは焚き火をと思ったが今晩から明日にかけては大雨の予報なので苦労して薪を集める気にもならず、ゆっくりと寛ぐ。
夕方からかなり激しい雨になる。沢と違って湖は急激に増水しないので安心だが、翌朝、確認すると湖面の水位は50cmほど上がっていた。

16日 曇時々晴
雨は上がったようだ。前線もどうやら南下しているようで存外天気もよい。明日一日で戻るのはキツイので割沢の下流部まで入っておくことにする。
割沢は一昨日下っているのだが天気がいい時に遡行するとなかなか開けていて岩盤もはっていていい沢だ。
一昨日見ておいたブナの平の小さなテン場にタープを張り薪を集め、目の前の釜で水浴びをし一枚ずつ脱ぎながら洗濯もする。あとはもう何もすることがないので少し酒を飲みながら夕方までぼぉーとする。至福の一時だ。
陽が陰ってきたので焚き火をつけ飯を作りながら残り少ない酒をちびりちびりをやり、明日は早出なので早めに寝る。夜半に激しい雨が降る。

17日 曇
今日は乗越す場所が違うだけで、下った沢を登り登った沢を下るルートなので12時くらいに乗越し15時に矢種沢出合、15時半に林道、17時に林道ゲートとほぼ予定通りに行動。
ゲートからタクシーを呼ぶがゲートから少し上へ上がらないと電波は届かない。
水上の新しくなった共同浴場「ふれあい交流館」(500円、21時まで)で汗を流し温泉街の居酒屋で打ち上げをして21時過ぎの電車で爆睡して0時過ぎに帰京する。

結果、敗退となってしまったが大塚さん、夏合宿初リーダーご苦労さまでした。
また、急遽参加できなくなった山口さん。食当ありがとうございました。すべて残さずおいしくいただいてきました。(記:長南)

<コースタイム>
8/13 林道ゲート16:20−17:35ヘイズル沢出合
8/14 6:30-6:55渡渉点−7:05矢種沢−7:25一の沢−8:40三の沢9:05−9:30四の沢−11:20稜線11:35−14:55割沢本流−18:15割沢出合
8/15 9:25−9:55赤倉沢出合−11:30(戻る)−12:15赤倉沢出合
8/16 10:15−10:40割沢出合−12:10BP
8:17 6:40−9:00支流出合−12:10稜線−12:55四の沢13:30−14:40一の沢15:00−15:10山道−15:30林道−17:20林道ゲート

<1/25,000地形図>
尾瀬ヶ原・至仏山・奥利根湖・兎岳

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