![]() |
2005/10/09 焼石:夏油川ウシロ沢 |
焼石は、尿前川水系、胆沢川水系、南本内川水系と山域としてほぼ把握ぐらいは入渓してきたので、今回は夏油川のあたりで沢を繋いでゆっくり秋の焼石を満喫しようかと計画を練っていたのだが、増田さんから「夏油温泉ベース」という、これまた魅力的な案が呈示され、さらに松ちゃんがパーティに加わった段階で「夏油温泉自炊場ベース日帰りの沢3本」という流れは加速し収束してしまった。
残念ながら増田さんが急遽いけなくなってしまったが、結果的に2日は雨で晴れた日だけ沢登りに出かけ、雨の日はきのこと湯治という、秋ならではののんびりまったりゆっくりとした日々を楽しむことができた。
■9日 曇のち雨
夜行バスで早朝に北上駅に降り立つ。空はどんより曇っているが雨はなんとかもつのかなという空模様だったが、タクシーでうつらうつらしながら夏油温泉についてみると本降りになっていた。
夏油温泉の自炊部は4つの建物に分かれていて、それぞれ「紅葉」「夏油」「経塚」「薬師」という名前がついている。値段は館によって若干異なるが1泊2000円前後。我々の部屋は「紅葉」。10畳の畳敷きでちゃぶ台があって障子をあけると縁側のような廊下があり、その前はすぐに道というなかなか味のある佇まいだ。
雨はやみそうもないので朝寝をしてから朝風呂をきめこんだ。
夏油温泉の風呂は7つ。内風呂が「小天狗の湯」と「白猿の湯」。露天は「大湯」「滝ノ湯」「仙気ノ湯」「真湯」「女(目)の湯」の5つで基本的に混浴。時間帯で入れ替わる湯もある。
夏油川沿いの右岸と左岸に分かれた露天は湯を引いているのではなく、底や脇などから沸いている源泉なので温度調整はなく熱い湯はそのままに熱い。特に大湯は熱い。湯はナトリウムーカルシウム泉の無色透明の湯だ。
まず大湯に入り部屋で飲み始めていると遅れて合流の古川原君が到着し宴会になり湯治1日目は終了。
■10日 晴れ
今日は予報では3連休唯一の晴れなのでメインのウシロ沢へ向かう。
ウシロ沢右岸の林道が沢から離れるあたりで沢へ降りると早速ナラタケとキクラゲがありキノコ採りモードでなかなか進まなくなる。しばらくは平坦な地形が続き634m付近で左岸から沢を合わせると小滝と岩盤が目立つようになる。
二俣の6m滝は右から巻く。その上には10m滝がかかりゴルジュの中を右に折れている。10mはスタンスがしっかりしていて右から登れる。沢は一旦穏やかになりナメ滝と斜瀑が続き青空に紅葉が美しいところだ。2段8mは右岸の壁に残置ハーケンがあるが右から素直に巻く。
二俣の滝は12m。見事に滝で出合っている。一旦、右岸手前の枝沢から左俣へ巻いてから右俣の落ち口へ回り込む。
しばらく開けるがトイ状を突っ張って越えると沢は急激に高度をあげはじめる。10m滝は右岸のルンゼから巻き、15m滝は左岸の枝沢から巻く。
ここを越えると沢は開け樹林帯が降りてきて再びキノコモードに。左岸に拡がるブナ林がこの上なく美しい。このあたりからナメが延々と続く。稜線が見えているのでまるでコンクリート舗装された登山道を歩いているような錯覚に襲われる。
詰めの藪もさしてなく、1205mの北東の鞍部に詰めあがる。
帰りの登山道もキノコモードで下る。結局、この日はナラタケ、ナメコ、ヒラタケ、キクラゲ、ホコリタケ、マスタケと3人では十分すぎる量が採れた。
登山道を下り降りたところは自炊場の裏。温泉もすぐだし即宴会に突入できるロケーションは完璧。
キノコはナメコおろし、ナラタケの卵とじ、マスタケとヒラタケのクリーム炒めでいただいた。
■11日 雨
朝起きた段階では雨こそ降っていなかったので枯松沢にキノコ採りがてら沢を登ろうかとモーションを起こしてみるが、松ちゃんはシェラフの中で呪文を唱えているし、古川原くんは体調よろしくないようなので、と理由ができたところで今日も湯治だ、と障子を開けると雨になっていた。
古川原君は一足先に帰り、松ちゃんと私は午後2時台のバスで帰ることにして今日も湯治。
松ちゃんは全湯踏破へ邁進して意気揚々と部屋を出て行く。障子の向こうから「朝寝、朝酒、朝風呂。朝寝、朝酒、朝風呂~」と歌うように縁側から道へ降りていく。ひょっとしてシェラフの中で唱えていた呪文はこれだったのか。
ウシロ沢は下流部の穏やかな流れ、中流部のゴルジュと大滝、上流部のナメ、と短いなかにコンパクトに纏まった秀渓だった。
秋には自炊場ベースで東北の山々を沢から巡る、というのも悪くはないなと次に行く自炊場ベースの山域を思い描きながら帰京した。(記:長南)
<コースタイム>
夏油温泉7:30-10:00二俣10:15-12:05登山道-14:40夏油温泉
<1/25,000地形図>
夏油温泉・三界山