足尾山塊は懐が深いので、日帰りの計画は立てにくい。ならば、松木川の入門を第一の目的に易しそうな小沢をちょっと覗いてみますか。
前夜、両毛線の岩宿駅で五味淵君を乗せて国道122号線を北上する。間藤駅は無人で広さは十分。ただ、向かいの古河作業所の明かりで落ち着かないので利用を諦める。三川堰堤の親水公園の駐車場で幕営となる。落水の音が激しいが気にならない。
6月4日(日)晴れ
松木川林道は、入口に監視カメラつきの立派なゲートがあり車は入れない。日本のグランドキャニオンと地元が命名した荒涼たる山容を眺めながらの林道歩き。このところの植林運動の成果であろうか本流左岸側は緑が目立つ。松木村の跡地と思われるところは殺風景な広場。往時の様子はどんなだっただろうかと想像しながら歩く。植樹の一本一本に参加者の名札がつけられていて、前の一番目立つところに地元国会議員の名前があったりする。さすがは栃木県。
大ナギ沢出合の少し先に広いスペースがありクライマーらしき人たちが幕営している。林道は徐々に荒れ、歩きにくいところもある。右岸の黒ずんだ絶壁は圧巻の一語に尽きる。対岸にウメコバ沢が見える頃、本流左岸の道形が消え、広川原の渡渉を繰り返しながら進む。
最後の堰堤を越すと左岸から三沢と小足沢が続けて出合う。小足沢には出合のすぐ奥に通過困難な悪場があるそうだが、そう思って見てみると出合も不気味な感じがしてくる。ここを過ぎると川幅が狭まり、平凡な川原歩きとなる。やがてみすぼらしい大ナラキ沢が左岸から出合い、右岸の大崩壊地を仰ぎ見ながら過ぎてすぐに左岸から綺麗な滝を落としてカマノ沢が出合う。
入口の滝は、5m滝が2段連なっているが簡単に越えられる。少し歩くと1対1の二俣となり、左俣に入る。ゴーロ状で平凡で悪場も全くない。1290m付近の1対1の二俣は左沢に入る。深山のハイキングといった雰囲気のまま右岸から入る小さな流れを見送り一時的な伏流を経てしばらく進むと滝らしきものが現れた。5×5mのナメ滝、続く3m、4m滝を簡単に越える。奥の1対1の二俣は左に入る。傾斜が増し、水が消え、滑りやすい笹の斜面をぜいぜい登ると藪もなく登山道に出た。1695m峰の南の肩。
皇海山をはじめ周囲の山々がよく見える。笹の斜面でのんびりと休息。帰路は、ニゴリ沢道経由とする。国境平まで登山道を下りそこから東へ入る踏み跡を探すが見つからない。かまわず草原を少し下ると平らでじめじめした場所に出る。水が弱々しく湧き出している。ニゴリ沢支流の源頭と思われる。
ここから東へ延びる尾根に乗るとすぐに踏み跡が現れ歩き易くなる。尾根の右側に下りる道がないか慎重に探しながら下っていくと、尾根の末端近くまで下ってしまい、左側の今日遡ったカマノ沢に出てしまった。1250m付近。結局、最短最善の下山コースを採ったことになる。松木川本流に下り立ち、上流の様子を見にいくとすぐ大きな釜に続く狭いゴルジュが見えた。直進は無理と思われる。
帰路は往路を戻る。広川原で釣師に話し掛けられる。遡行図を持って沢の奥まで釣りに行っているそうだ。鬱陶しい。毒水飲んだ毒魚を食えるのかと聞いたらムッとして、そういう人は食わんでもいいと言い返された。(記:戸ヶ崎よ)
<コースタイム>
三川堰堤ゲート(5:50)〜(6:40)大ナギ沢出合(6:55)〜三沢出合(8:20)〜(8:50)大ナラキ沢出合(9:00)〜(9:20)カマノ沢(9:35)〜左俣に入る(9:45)〜(11:35)稜線(12:15) 〜国境平(12:35) 〜カマノ沢佐俣1250m付近に合流(13:10)〜(13:45)松木川本流(14:00) 〜(17:00)三川堰堤ゲート
<1/25,000地形図>
中禅寺湖、皇海山