沢杉という木をご存知ですか?文字通り沢に生える杉です。富山県の黒部川扇状地の扇端部、海岸近くの吉原地区に自然公園「杉沢の沢すぎ」としてほんの少しだけ自生、保存されています。
沢杉の林の中は沢が流れています。水深は浅く一面に流れています。沢の中に杉が生えているような感じです。沢床は白い砂地というかじゃりです。ここは扇状地の先端部分は水が湧き出るところで、この沢も湧き水からできています。沢が深くなっているところはきれいな水草も咲いています。「杉沢の沢すぎ」には「沢すぎ自然館」という建物もあり、沢杉について学習できるようになっていて、小学校の学習の場としても利用されているようです。
杉林というと奥多摩のうっそうと暗いイメージがあると思いますが、沢杉の林は、位のですが、水が流れているため、清らかで涼しく気持ちのよい林です。もちろん扇状地の湧水帯は富山県以外に他にもあると思いますが、沢杉が生育している場所はめずらしいらしく、国の天然記念物に指定されています。
私が子どものころ、現在も北陸本線の通っているあたりにはこの沢杉の林が点在していました。林の隣に田んぼがあるという風でした。林の中の沢は地元では「しょうず」と呼んで田んぼ仕事のときにお茶やすいかやうりを冷やしたり、飲み水として使用していました。しょうずというのはなんだろうと思っていましたが、清水岳と書いて「しょうずだけ」という山があるのを知って、清水の方言だとわかりました。水は湧き水のため冷たいので(資料によると11℃位)水には入らず、杉の根元がまがりくねってからまったりしているので、のっかって遊んだりしていました。林の奥はうっそうとしていて暗く、もちろんマムシも生息していました。
昭和40年代なかばに基盤整備事業で米作りを機械化するため田んぼは大きく四角くなりました。その際に45ヘクタールあった沢杉の林はほとんど失われ、現在2.7ヘクタールほど残っています。今でこそ自然保護は価値を認められていますが、当時は少し残すのもたいへんだったということです。現在、減反政策で米を作れずあそんでいる田んぼを見るたびに、何のために田んぼにしたのかと思い憤りを感じます。
実は沢杉は立山杉と同じものだそうです。立山杉は、樹高が高く枝が下向きに張り出していてかっこよく、小学校にシンボルとして植えられていました。立山杉は変幻自在に環境に適応する杉で、例えば有名なものに岩に巻きついて複数の杉が根を共にしはりめぐらせてできる洞杉と呼ばれるものがあります。片貝川の南又谷右岸にあるそうで、ぜひ行ってみたいと思います。それから立山アルペンルートの美女平に立山杉の原生林も。
立山杉はかっこよく、たくましく、生命力があり、みずみずしい、つわものです。私の心のよりどころかも・・・。でも庭に立山杉は植えられない。頭の中はぶなの森にすっかり占領されていましたが、昔を思い出し、いろんな森をめぐりたいと思うようになりました。(い)