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2008/08/09 朝日:西ノ股沢〜化穴沢下降〜以東沢 |
今年の夏合宿の山域が三面水系で決まり、西から横断するか9年前下降した西丿俣から三面に抜けるかと考え線を引きはじめていた。
学習会での「行きたい沢」リストの中で吉原さんが西丿俣から以東沢のルートを挙げているのを見て、朝日前衛での集中の帰りたまたま駒寄PAの食堂で一緒になったので声をかけてみた。
(ち)「吉原さん、夏合宿、西丿俣行きますか?」
(よ)「…」
(お)「長南さん、それ全く同じ話を5分前に車でした」
しまった。大塚さんも西丿俣を候補に挙げていたっけか。しかも集中で同じパーティだった。大塚さんの入った年の夏合宿だったしなぁ、化穴から西丿俣下降は。う〜む、先を越されたか。大塚、吉原、長南。この3人のパーティは非常に魅力的だが夏合宿ではありえんな。う〜む。
と唸ってしまった6月末であったが、三面でやるなら竹丿沢と岩井又、どちらもないのは寂しいということになり、やさしい大塚さんは岩井又中俣のリーダーをやってくれることになって西丿俣を譲ってもらう格好になった。
大塚さん、ありがとう。
■9日 晴れ
夜行バスは遅れることもなく鶴岡に着いた。駅前で泡滝ダム行きの会員バスを待っている人達をさっそく吉原さんが2名勧誘。4名になってタクシーで泡滝ダムまで入る。
泡滝ダムで準備をしていてもそれほどアブは寄ってこない。9年前に西丿俣を下降したときは大鳥の集落でもかなりのアブが出ていて、泡滝ダムのバックウォーターあたりはものすごい数のアブに纏わりつかれたものだ。
今年はそれほどアブに悩まされることはなさそうだ。
9年前、広河原から早朝に下山遅れの連絡に駆け降りたときは、振り返る余裕もなかったので泡滝ダムまでの記憶は淡い。こんな渓相だったかとはじめての沢のように遡行を開始する。水量は少なめでたまにヘツリ泳ぎを交えながら水線際を快適にすすむ。
沢が左に屈曲する先に連瀑があるようだ。右に甌穴があり手前は淵になっている。吉原さんが左の傾斜を微妙なトラバースで覗きに行くが難しいようなので、そのまま右岸を巻きはじめる。私は手前まで泳ぎ戻ってしまっていたので高巻けそうなところから取りつくが巻き上げられてしまい、かなり吉原さんを待たせてしまう。
このあたりから花崗岩が磨かれた渓相となり、両岸が立ってくるが潅木はまだ低く切迫感はない。U字状に削られた口から大きな釜に水を吐き出している滝は3mほどだが、U字状の奥はうねっていて伺い知れない。右壁を5mほど登るが先に続く細くU字状にえぐられたゴルジュは通過できそうにないので、そのまま潅木帯に吉原さんがロープを伸ばす。姿が見えなくなったころに上からコールがかかるが聞き取れない。吉原さんとはまだコールを合わせていなかったが、自分がリードした場合を想定してみて「登ってこい」だろうと、ロープを結んでロープを引いてみるとテンションがかかったので続いて登る。トラバース気味に巻いてクライムダウン。すぐに3段の斜瀑で金堀沢が出合う。9年前に暗い中、懸垂下降してたどり着いた広河原はここより下流だったはずだが全くわからなかった。
金堀沢出合からは側壁が高くなる。切り立った花崗岩の側壁はツルツルに磨かれて美しいがむやみに突っ込むと巻き道を断たれそうだ。浸かりながら小さな滝を越えていくと行く手を遮るのは逆くの字型のトイ状6m。右岸を空身で登り荷上げ。吉原さんが落ち口まで支点をとってトラバース。確保してもらってトラバースするが一歩が出ずにテンションをもらって通過。
「落ちないでくださいね」。この言葉が吉原さんから出たら真摯に受けとるべし。
つづいて丸太のかかったゴルジュ幅一杯の5m滝。吉原さんが空身で様子を見に行く。右の斜度の強いへりをナッツで支点をとって滝下へ。右に曲がる5m滝の先を覗いて手で×の合図。ここは少し戻り左岸のルンゼを登り巻く。まだゴルジュは続くがクライムダウンできるところから沢に降りる。すぐにえぐられ水深の深い瀞の続くゴルジュになる。かなり立った右壁を空身で吉原さんがナッツを噛ませて登りきり荷上げ。先も降りられないので潅木帯をトラバース。クライムダウンしたところから下流を眺めると、磨かれた側壁のゴルジュの中に段々の淡いグリーンの釜がいくつも続く見覚えのある光景だった。たしかここで大休止をした覚えがある。
ここでゴルジュは一旦終わり、3段程度の滝を越えると甚六沢が小さな流れで出合う。
この先もゴルジュが続くがこのペースなら越えられるだろうと先にすすむ。この先のゴルジュは褶曲した層がひとつ抜けたようなゴルジュで少し左に傾いている。先ほどのゴルジュのように大きくはないが狭く6mほどの滝も勢いが強く近寄れない。左岸から低く巻く。適当なところからクライムダウンするとゴルジュは終わり、これまでと打って変って開けた平らな渓相になる。思いのほか、あっけなく抜けてしまった。
水上沢の出合まで行き、その手前の河原を泊まり場とする。中俣と右俣(仮称)方面から白い冷気が流れてくる。9年前にはなかった雪渓がすぐそこにあった。
■10日 晴れ
水上沢の雪渓は崩れ落ちているか短いものだったので潜って通過。さしたる薮もなく大影境東の鞍部に出る。三面側は急な草付き斜面で下降は辛そうなので左岸の尾根をしばらく行き化穴沢左俣に降りる。二俣までは難なく下るがその先はV字状に谷は狭まり懸垂になる。お互いにロープを持っているので支点を作りに先行しあってさくさくと下る。釜に垂直に懸垂、連瀑を50m+30mで一気に懸垂、支点がなくハーケンで支点をとって懸垂、最後はハングを乗り越して50mいっぱいでの懸垂で抜ける。
横山沢に出て以東沢出合まで下降するが、先行者の足跡はない。増田パーティはまだ通過していないようだ。時間的に途中で出会うかもと思ったが以東沢出合まで下っても出会わなかった。以東沢にエスケープしたかとも思ったが以東沢にも先行者の足跡はない。本流でてこずっているようだ。
以東沢は穏やかな沢で悪場もないので笹原沢手前の650m付近までこの日は進む。
■11日 晴れ
今日は急いでもバスには間に合わないので、ゆっくりと遊びながら遡行する。以東沢は何ヶ所か流れが変わってしまったところがある。大水が出て抜けたところや詰まって迂回してしまっている。稜線が見えはじめたとことで左からすっきりと大滝が落ちている。この手前で11時の交信を行い、増田パーティが以東沢に入っていることを確認。大滝はヌメッているので左の壁を吉原さんがロープを引いて登る。確保してもらって登り、潅木をトラバースして落ち口に抜ける。大滝を登ると源頭の様相で草原に出たところで13時の交信。増田パーティは今日は以東小屋もしくはその手前あたりの予定のようなので合流は無理なようだ。
そのまま以東小屋に直接突き上げる。まだまだ元気な吉原さんは以東岳を往復。このまま大鳥池に下る登山道は展望がないので、オツボ峰経由で下ることになって再び以東岳へ。アップダウンはあるが八久和から湯井俣方面が眺めることができ御花畑もあってなかなかいい登山道だ。吉原さんは八久和方面を眺めながらなにやら冬のルートを考えているようだ。
大鳥小屋のテン場は広々としているがタープとツェルトは少々みすぼらしく場違いにも見える。でもアブがいないので快適だ。
■12日 晴れ
朝1番の泡滝ダムからのバスに乗り、ぼんぼの湯に寄って鶴岡に出る。新潟回りは2時間以上の待ちなので陸羽西線で新庄に出て始発の山形新幹線で帰京。
今回は天気に恵まれ水量も少なかったので予定より1日短い夏合宿になったが、吉原さんのお陰で毎日中身のぎゅっと詰まった山行になった。吉原さんに感謝です。たいへん楽しい夏合宿でした。(記:長南)
(途中で筆記具を紛失したため遡行図は略)
<コースタイム>
9日 泡滝ダム8:20ー11:00金堀沢ー13:45甚六沢14:00ー15:45水上沢出合手前BP
10日 BP6:10ー8:20大影境東鞍部ー12:40横山沢出合ー13:10以東沢出合ー15:40笹原沢手前600m付近BP
11日 BP6:30ー13:20以東小屋14:00ー16:10大鳥小屋
12日 大鳥小屋6:50ー8:50泡滝ダム
<1/25,000地形図>
大鳥池、相模山