2008年9月27日(土)〜28日(日)
L佐藤、古川原、小池
最初の計画は巻機・奈良沢川ブサノ裏沢だったが、天気が悪そうなので二口に転戦することになった。大東岳に突き上げる鹿打沢の予定は、穴戸沢本流に変更。寒さと薄暗い曇天に、二口の美しいブナ林もくすんでしまったのは残念だったが、2日目の北石橋ツァーが、短いながらも山椒のようにピリリと効いた楽しい山行になった。
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2008/09/27 二口:穴戸沢~樋ノ沢~カケス沢 |
9月27日(土)曇一時雨
前夜、池袋ニチレンに集合し、二口キャンプ場のトイレのある駐車場に着いたのは1時過ぎ。テントを張りひとしきりおしゃべりをして、2時就寝。冷え込んだ。朝少し日が射すも、曇がちで小雨も降る非常に寒い一日となった。
車で二口温泉方面に少し戻り、穴戸沢林道に入る。工事の車が2台ほど慣れた様子で後ろからやってきたので、追い抜いてもらう。穴戸沢の標高480m付近に右岸から流れ込むのが鹿打沢だ。「シシウチ」と読むらしい。出合のすぐ先に、鹿打林道の登山口があり、車を数台止められるスペースがあるので、ここに車を置き、10分ほどさらに歩く。林道がカーブすると、正面に大東岳と東面の岩壁が望まれる。右手の木の幹にペンキで「入口」と書かれたところから踏み跡をたどって、猿倉沢に下りた。古ワイヤの散らばる沢を少し下り、小滝を越えると穴戸沢に出る。
深い淵があり、小滝を越すと卵形の大岩が沢をふさぐように現れる。水滴をたっぷり含んだしっとりとした雰囲気、苔むした大岩、黒っぽいナメ、幅広い小滝やスダレ状の滝、あぁ二口だなぁ、という感じがする。今日は癒されよう。
踏み跡もあり、それなりに人も入っている気配がする。倒木にびっしりついたブナハリがあった。ベージュがかった白が新しくてきれい。
アズマ沢の手前からしばらくは、ブナ林に大行沢のようなナメが続き、とても美しいところだ。アスファルト状の堰堤のような3m滝で、古川原さんが、魚が走った、と言う。左岸から入る古唱沢は、出合に20mほどの美しい滝をかけている。その先に巨大なおむすびのような大岩を乗せた3m滝が現れる。不思議な景観を醸し出すこの沢の中でも、最もインパクトのあるところであろう。こんな景色に出会うとなんだかうれしくなる。
675m付近はほぼ直角に左に曲がる。黒いアスファルト上の壁に囲まれた奇妙なところ。右岸のバンドをトラバースするが、少しいやらしくて楽しい。左岸から小さな滝をかけた小沢を入れた先も、狭い淵の右岸のバンドをトラバースする。
沢筋が川原状に広がり、大岩のある小滝で今度は佐藤さんが岩魚を発見。2段6mの滝をかける枝沢が入る辺りで、釣り竿を出す。佐藤師匠の教え通りの場所に立ち、教え通りに釣り針を落とすと、オヤオヤ、こんな素人の私の竿にも引っかかってくる岩魚君がいるじゃありませんか。
これはまだ釣れるかも、と歩き出すとすぐに710m付近の二俣となる。右俣は西晴沢、左俣は階戸沢というようだ。我々の進む階戸沢には5m滝がかかっている。もしかしてこれが魚止めでは?と古川原さん。右岸の小沢から巻いて下りると再びナメが川原を交えながら続く。765m付近の奥二俣の手前で、沢幅が狭まる前に昼食とする。小雨が降り、手がかじかむほど寒い。
あまりの寒さに、また釣をしてもいいよという佐藤さんの声にも、ひっこめた手がなかなか動かないほどだったが、せっかくなので、ゆるゆると竿を出す。またまた師匠の教え通りに竿を振ると、素直な岩魚さんがやって来てくれました。
奥二俣を右へ入るとあとは小滝をいくつか越え、川原を坦々と歩く。稜線が近くなって沢が左に曲がるところから、適当に右手の尾根に登ると登山道に出た。
地形図上の910mは十字路になっており、権現様峠と書かれた標識が立っている。南面白山方面に進み、大東岳の斜面を少し登り返すように巻いて、鞍部の手前から樋ノ沢に下りる。
樋ノ沢はブナの林とナメの沢である。古木は見られないが、ほっそりとしたまだ若いブナがまっすぐと、見渡す限り生えている様子は、森の精の住処のようでたとえようもなく美しい。ここを歩くのは3度目になるのでそれも何となく懐かしい。ただ今日は曇天のため薄暗いのが残念だ。
樋ノ沢の避難小屋には数人の登山者が宿泊するようだった。我々は川原で焚き火をした方がいいということに意見が一致し、登山道を少し下り、北石橋の道標があるところから大行沢に下りた。佐藤さんが釣ることを考えてテン場を探しながら遡るが、あまりよい場所がなくまた少し戻って、カケス沢の少し上流の右岸にテントを張った。
古川原さんが気合を入れて川原の整地をしてくれたので、焚き火スペースも確保できた。さらに大きなザックから野菜が出てくるわ出てくるわ、美味しいポトフのご馳走になった。
9月28日(日)曇
相変わらず雲の多い空だが、雨が落ちてこないだけよい。寒さも昨日よりは少し和らいだようである。
朝食をすませ、空身でカケス沢右俣に入り、北石橋に向かう。古川原さんが終始トップで行く。始めはなんと言うこともない小さな沢だが、しばらく行くとスラブの壁が立ちはだかり、沢は右へ曲がる。スラブの壁が狭まってゴルジュ状になるこのあたりからが、小さいながらも手ごわい滝が連続して、どきどきしながらもなかなか楽しいところになる。佐藤さんは前に来たことがあるので、う〜ん、ここは巻いたかな〜それとも登ったかな〜、などと昔を思い出しながら、なんだか口元がにやけてうれしそうな顔をしている。
はじめの3m滝は小さく巻く。3段8m、半円のトイ状滝などを過ぎ、登れそうにない5mを右岸から巻く。巻きのルート、どこから下りられるかなど、言われてやっと、自分が何も見ていないことに気がつく。釜を持った小滝がいくつか続き、へつったり、突っ張ったり、ゴルジュの上を大股でまたいだり、ヒヤヒヤしながらも、どれも楽しく越していく。小股の私は古川原さんの真似をしてゴルジュを跨ごうとしてドボンしたが、最初から水につかっていけば何ていうことのないところ。へつりや突っ張りは泊まりの荷物では荷揚げになりそうだが、空身なので素直に滝と戯れることができる。
ゴルジュを抜け、佐藤さんの「そろそろ」の声に期待しながら歩いていく。沢がゆるく右にカーブし、空間が少し広がった・・・と、ふと左を見やると、それはそこにあった。北石橋。四角く穿たれた、文字通り石の橋の下を、さらさらと美しいナメ滝が滑り落ちている。不思議な自然の造形なのに、奇を衒った様子もなく景色の中に溶け込んでいる。異次元の世界に迷い込んだような、だが心地よい感覚に包まれる。
ナメ滝を登って石橋をくぐり、左岸の登山道から少し登り返して幅広の尾根に上がり、気持ちのよい林の中を本流に下る。登山道からは、北石橋を下から見ることはできない。下からの景色の方が私は好きだ。北石橋を見るためにこの道を登る人がいるのかと話していたら、数人のパーティが登ってくるのとすれ違った。上り1時間半、下り30分足らずの楽しいツアーだった。
荷物をまとめ、大行沢を避難小屋まで遡り、大東岳へ標高差600mの登り返しとなる。車を置いた鹿打林道の登山口まで戻るためには、二口温泉経由で林道を辿ることもできるが、かなりの大回りとなってしまうので、登山道を登るのが嫌いな佐藤さんもこちらを選択したのである。
大東岳への登りはかなりの急登だ。山頂直下で家族連れなど、3組ほどの登山者に会う。地元の人にとっては気軽に足を伸ばせる山なのかもしれない。ガスが湧き遠望は今ひとつであったが、しばし山頂で休憩した後、本小屋方面へ下る。900m付近で登山道が尾根から右へそれるあたりに、鹿打林道の標識がある。鹿打林道は、822mの尾根を経由しているのではないかという予想に反して、まさに鹿打沢を絡めながら、途中から植林帯を下降するようになる。通る人は少ないと思われるが迷うことはなく、徒渉も沢が小さいので特に問題はない。最後は車の通れるほどの幅になり、穴戸沢沿いの林道に出る。
秋保温泉の市太郎の湯に入って帰路に着いたが、事故渋滞につかまり、長い道のりになった。
(記:小池)
<コースタイム>
9/27(土)
駐車場8:40=9:05/9:30鹿打林道入口—入渓9:45—古唱沢出合10:45—二俣手前(釣)11:25/45—奥二俣手前(昼食・釣)12:10/13:20—登山道14:20—権現様峠14:25—樋ノ沢下降開始14:45—樋ノ沢避難小屋15:20/30—テン場16:20
9/28(日)
テン場8:10—入渓8:15—北石橋9:45—テン場10:15/10:35—避難小屋10:50/11:00—大東岳山頂12:45/13:00—900m付近分岐13:45/13:50—鹿打林道入口15:00